Never Sealed

呼吸は単独では成立しない。空気は許可を求めず、境界を通過し続ける。内側と外側の区別が溶ける瞬間を描くテキスト。

いま、あなたは侵入されてる

静かに

鼻孔から入り
喉を通り
肺の奥で広がる

拒否はできない

空気は許可を求めない

照明の下でも
暗闇の中でも
夢の途中でも

分子は感情を参照しない

肺の内と外は
薄い膜一枚で接してる

壁ではない

通過

いま吸った分子のいくつかは
数分前まで誰かの肺にあった

数時間前
葉の裏で光を受けていたかもしれない

数日前
嵐の上昇気流に巻き上げられていたかもしれない

純度という幻想

実際は混合

一回の呼吸で
外部の原子が血液に溶け
神経の発火に関与する

思考は内部だけで完結しない

いまこの瞬間も
無数の呼吸が地表で同期してる

吸う
吐く

圧力差が連鎖

あなたの吐いた分子は
時間差で誰かの吸気に入るかもしれない

呼吸は空間で切り分けられない

時間でも分断されない

いま吸っている空気の一部は
何十年前
何百年前
別の肺を満たしてた

分子は残る

配置が変わるだけ

あなたは現在に立っているつもりでも
呼吸は過去を取り込み
未来へ送り出してる

現在は密封されていない

吐く
混ざる
流れる
戻る

交換は止まらない

拡散
保存
再配置

それでも
呼吸は単独では成立しない

あなたは閉じてない

空間にも
時間にも

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この記事を書いた人


Floor Level Mind運用中。
都市の標準装備を静かに観察する人。
未完了と疲労のあいだで思考する。
高さを落とすことで、解像度を上げる。

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