未来 = 過去 + x

アイドルに少し興味はあるけれど、自分に向いているか、続けられるかまでは分からない。GlassRoomは、最初から未来を決めずに参加を考えられる東京のアイドルメンバー募集です。

まだ起きてないことをもう終えてる。

何かを始める前にもう少し先まで行ってる。会ったらどうなるか。似合うか。続くか。途中で嫌にならないか。あとで恥ずかしくならないか。誰に何て言うか。まだ起きていないのに終わったあとの自分は先にいる。未来を想像してるというより未来の撤収作業まで済ませてから現在に入ってる。

初めてのことにも完全な初回が少ない。知らない場所へ行ってもそこでどう振る舞うかを少し知ってる。知らない人に会ってもどういう自分を出すかはだいたい決まってる。何かを始めれば向いているかを測る自分まで最初から同席する。本人だけで行けばいいのに観客と採点者と編集者まで連れてく。頭の中の関係者席だけ毎回よく埋まる。

本番なのに再演っぽい。言われる前から返事を考える。撮られる前から顔を作る。誘われる前から断る理由を持つ。やってみる前から「自分にはこういう感じだろう」と置く。現実がこちらへ来る頃にはもう頭の中で何度か会ってる。世界の第一印象を世界より先に自分が担当してる。

予測はかなり当たる。似合わないものを避ける。危なそうな人を避ける。何も残らなそうなことを避ける。外さない回数が増えるほど「自分ならこうなる」の精度も上がる。「やっぱりそうだった」が積み上がりまだ試してない未来まで昨日までの自分が判例として処理し始める。

続かなかったらどう見える。急にどうしたと思われる。似合ってなかったら。あとで消したくなったら。未来の自分から返ってきた視線がまだ存在してない出来事の後始末を始める。失敗してないのに失敗したあとの空気だけ先に知ってる。

「受からなかったら」と思うには一度は応募した自分が必要になる。「知り合いに見られたら」と思うには人前に出た自分を先に置かなければならない。「続かなかったら」は続けようとした自分なしでは成立しない。避けたい未来ほど頭の中ではかなり具体的に生きてる。そのあとその未来を起こさないために身体だけ止める。頭の中では遠くまで行ったのに現実には出発記録がない。

消えた未来は失敗にならない。誰にも知られない。説明もいらない。ただそこにいたかもしれない自分まで一緒に消える。やったら嫌いだったかもしれない。意外と続いたかもしれない。自分では気づかなかったところを誰かが見つけたかもしれない。その結果だけはいくら精密に考えても取得できない。

「やりたいことが分からない」の中にはまだ「やりたい」になる前に考えすぎてる状態も混ざってる。最初はもっと小さい。なんとなく気になる。理由はないけど目が戻る。自分には関係ないはずなのになぜか残る。まだ「やりたい」にもなってない気持ちへ将来性や適性や継続性まで求めればそれは消える。生まれたばかりの興味に完成した理由まで要求してる。

やってから欲しくなるものがある。行ってからまた行きたいと思う場所。着てから自分のものになる服。撮られてからもう一枚見てみたくなる表情。呼ばれて初めてそこへもう一度行きたいと思うこともある。興味が先にあって経験するとは限らない。経験したあとに初めて気になるものもある。

始める前に理由を欲しがる。昔から好きだった。向いてると思った。将来に役立つ。理由があれば自分の行動を自分で理解できる。その理由はだいたい昨日までの自分から作られる。理由のあるものだけを選び続ければ未来は昨日までの延長になる。その代わり未来は知ってる形にとどまる。

未来から見て説明しやすい現在もある。「やって失敗した」「向いてなかったけど経験になった」「あれがきっかけだった」。どれもあとから文章にできる。一方で「理由はなかった」「続けるつもりもなかった」「なぜかあの日だけやってみたかった」は扱いにくい。まだ意味がない時間は意味を持つ前に削られやすい。

未来の自分は現在へかなり口を出すのにやらなかったことについては何も知らない。行かなかった場所で誰に会ったかも断った一回から何が始まったかも着なかった服を着た自分がどんな顔をしたかも知らない。未来の自分は消した可能性の記録を一枚も持ってない。

予測が優秀でも使えるのはすでに持ってる材料まで。自分を知らない人がどこを見るかは計算できない。自分なら捨てる一枚を誰が残すか分からない。顔なのか。声なのか。動いたときなのか。何も考えてない瞬間なのか。本人が価値だと思ってないものへ外から先に値がつくことがある。それは考え抜いた先にある答えではない。現実に一度出した瞬間に初めて存在する。

未来を守ろうとして未来を何本も先に使ってる。こうなったら嫌だ。こう見られたくない。面倒になりそう。そのたび頭の中では未来が一度起きて採用されなかったものから消えていく。慎重に未来を選んでいるつもりでまだ使ってない未来を先に消費してる。

そのうち現在が短くなる。何かが起きる前にはもう先を知ってて起きたあとはすぐ意味がつく。まだ始まってない時間ともう終わった時間ばかりが長い。いま起きていることだけが少し狭い。

まだ起きてないことをもう終えてる。

頭の中では受かるところまで行ける。失敗するところまで行ける。飽きるところまで行ける。恥ずかしくなるところまで行ける。そこから帰ってきて何もしないこともできる。

ただその予測の中に最初から存在していなかったものが一つ入ると計算の続きを書けなくなる。

GlassRoom = x

x に何が入るかはまだない。

stilloperable

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stilloperable
個人ブログ。インターネット、仕事、学校、アイドル、まだ名前のついていない仕組みについて書いています。現在、GlassRoomというアイドルプロジェクトを準備中。

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