You are entering at your own risk.
アイドルになる資格はない。試験もない。免許もない。誰かの許可も必要ない。何年も練習を積んでからデビューする人もいる。今日から一人で活動を始める人もいる。入口はいくつもある。その違いを決める制度はない。アイドルは、始めることだけは驚くほど自由にできている。
その一方で、始める時期だけは誰にも用意されない。制度は「いつでも始めていい」と言う。でも、その「いつでも」は制度の都合でしかない。自分の側には、自分にしか存在しない時間が流れている。その流れは、誰にも合わせてくれない。
アイドルは、完成してから始めるものじゃない。長く訓練を積む人もいるし、未完成のまま立つ人もいる。その違いはある。でも、どちらを選んでも時間は使われる。訓練している時間も、活動している時間も、迷っている時間も、同じように過ぎていく。その時間だけは、あとから足すことも、戻すこともできない。
だから、アイドルにとって「待つ」は少し意味が違う。待っているあいだにも時間は進む、という話じゃない。待っているあいだにも、自分の一部が静かに過去へ移っていく。何かを始めるかどうかとは関係なく、その時期は終わる。準備が終わるのを待ってくれない。自信がつくのを待ってくれない。
時間は急がせない。焦らせない。警告もしない。昨日と今日の違いなんて、ほとんど見えない。一か月前とも、大きくは変わらない。だから人は「まだ大丈夫」と思える。その感覚は間違いじゃない。ただ、その「まだ」はどこにも記録されない。静かに積み重なって、ある日消える。
アイドルには「もう遅い」という言葉がよく使われる。本当に怖いのはその言葉じゃない。「もう遅い」は誰かの意見。時間は意見を持たない。何も言わない。何も奪ったつもりもない。ただ、同じ場所には二度と立てないという事実だけを残して、先へ進む。
この文章は、いつ読んでも変わらない。
来年読んでも、同じ文章。
十年後に読んでも、同じ文章。
この文章を読んでいるあなたは、もう今日のあなたじゃない。
時間は終わりを知らせない。
知らせる必要もない。
終わったあとも、明日はいつも通り来る。
多くの人は間に合わなかったことにも気付かない。
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Written by stilloperable
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