その場所はまだありません。土地も、建物も、住所も決まっていません。地図を開いても見つからないし、行こうとしても着けません。それでも私たちは、そこに住んでいた人を募集します。
条件は一つだけです。その場所を見たとき、初めて来たとは思えないこと。知らないはずの道に懐かしさを感じ、入ったことのない部屋で、以前ここにいた気がすること。証明は必要ありません。そもそも存在していない場所について、まともな証明を求めるほどこちらも野暮ではありません。
募集しているのは未来の住民ではありません。未来ならこれから住めばいい。必要なのはこの場所ができる前から、ここを失っている人です。
建物は人が住み始めた日に場所になると思われています。本当は逆かもしれない。誰かが「戻ってきた」と感じた瞬間に初めて場所が生まれる。壁や床はその感覚にあとから追いつくだけです。
採用された人には設計途中の図面を見てもらいます。まだ名前のない通り、用途の決まっていない部屋、誰も座ったことのない窓辺。その中から自分が忘れていた場所を一つ選んでください。
あなたが思い出した瞬間、その部屋は設計図へ追加されます。
つまり、この建物には完成図がありません。あるのはまだ会っていない元住民たちの記憶だけです。
応募の際は次の質問に答えてください。
あなたはここで何を失いましたか。
「何も失っていません。」その回答は受理されます。建物とは無関係なため、選考対象にはなりません。何も失っていない人には新しい場所で十分だからです。
私たちが作りたいのは新しい場所ではありません。
まだ存在していないのに帰ることのできる場所です。












コメント