アイドルになりたい人だけを探していない|GlassRoomの競合は他のアイドルではない

GlassRoomの競合は、他のアイドルグループではない。「自分には関係ない」と最初から候補に入らない状態そのもの。アイドルを一度も検索したことがない人から最初のエントリーが来るまでの競争構造を考える。

GlassRoomの競合は他のアイドルではない

GlassRoomが最初に勝たなければならない相手は「あなたには最初から関係のない話です」という状態そのものだ。

すでに「アイドルになりたい」と考え、いくつものオーディションを開き、条件や楽曲や活動内容を比較している人を取り合うなら、競合は他のアイドルグループになる。GlassRoomが最初に接触したいのは、その比較表をまだ一度も作っていない人だ。アイドル募集を検索したことがない。オーディションサイトを巡回したこともない。自分が応募する側だと思ったこともない。その人にとってGlassRoomは、他のグループより魅力が弱いわけではない。比較される場所まで一度も到達していない。

だからGlassRoomにとって最初の競争は他社より条件を良くすることでは始まらない。本人の候補一覧に「アイドル」という一行を表示させるところから始まる。それまでは応募率も、楽曲の強さも、衣装も、活動頻度も関係がない。候補になっていないものは比較されないし断られることすらない。

この状態を維持しているものはいくつかある。まず強いのがすでに成立している一日だ。学校へ行く。大学へ行く。仕事をする。友達と会う。SNSを見る。帰宅する。翌日また同じ時間が始まる。GlassRoomを嫌う必要はない。反対する理由もいらない。今日の続きをそのまま選ぶだけで新しい候補は入ってこない。新しい活動にとって、強い拒絶より何事もなく成立している日常の方が手強い。

本人が自分について持っている説明もその状態を支える。「私はそういう人じゃない」「人前に出る側ではない」「歌えない」「ダンス経験がない」「アイドルには興味がない」。これらは本人にとってかなり自然な文章だ。ただその文章が作られた時点で、撮られたときの自分も、知らない人に見られたときの自分も、一度見た人が後日もう一度探すかどうかも、まだ測られていないことがある。未測定の項目まで「自分には関係ない」にまとめられると募集ページへ来る前に候補そのものが消える。

周囲へ説明しやすい未来が優先されることもある。進学する。就職する。資格を取る。アルバイトをする。こうした選択には何のためにやるのかを説明する言葉がすでに用意されている。一方で「一度撮られてみたい」「知らない人からどう見えるのか知りたい」「数時間だけ別の名前で現れてみたい」はやったあとにしか意味が分からないことがある。経験前に説明しやすい未来と、経験後にしか説明が完成しない未来が並べば、前者の方が通りやすい。GlassRoomはこの説明のしやすさとも競争している。

既存の「アイドル」という言葉に結びついている条件も大きい。長いレッスン、週に何度ものライブ、移動、撮影、SNS更新、生活の大きな部分を活動へ寄せること。それを見て「自分には無理」と判断した人が、本当にアイドルそのものを拒否したのかは分からない。その活動形式を拒否しただけかもしれない。週に何十時間も使えないことと一度見た人からもう一度見たいと思われないことは同じ判定ではない。

GlassRoomが活動時間を短く考えようとしているのも参加を軽く見せたいからではない。活動した時間と記憶に残る時間を同じ数字で扱う必要があるのかを疑っている。一時間だけ現れた人が、その後一週間誰かの頭に残ることはあり得る。本人がその場を離れたあとに名前を検索され、前の写真まで戻られ、次に現れる時間を待たれるなら「一時間しか活動していない」という説明だけではその人に起きたことを十分に表せない。

You’re an idol when someone sees you once and wants to see you again. GlassRoomでいうアイドルは一度見た人の側に二回目が発生するところから始まる。本人が何時間活動したかだけでは決まらない。本人が「アイドルになりたい」と何年前から言っていたかでも決まらない。一回目はこちらで作れる。撮る。出す。見せる。二回目だけは見た側でしか発生しない。

そう考えるとGlassRoomが本当に遠いと感じるのは他のグループへ応募した人ではない。GlassRoomを見て「違う」と判断した人でもない。そこには少なくとも一度アイドルという候補が本人の画面へ表示されている。もっと遠いのはGlassRoomもアイドルも一度も自分の話にならないまま、十九歳、二十歳、二十一歳と時間だけが進んでいく人だ。その人には断った記憶もない。迷った記憶もない。アイドルにならなかった理由さえ存在しない。

だからGlassRoomの競合を一つだけ挙げるなら他のアイドルではない。「あなたには最初から関係のない話です」という状態そのもの。 現在の生活も、自己説明も、周囲へ説明しやすい未来も、既存のアイドル像も、その状態を維持する側に働いている。

GlassRoomが取りに行きたいのはその状態を崩すこと。「アイドルになりませんか」と答えを渡すことではない。親との会話について書かれた文章から来てもいい。「自分に向いてることがわからない」と検索して来てもいい。何かを始めたいという検索でも写真について考えている途中でもいい。その入口ではまだアイドルを探していない。読み進めたあとに初めて自分の候補一覧へアイドルという一行が増える。

そこで閉じる人もいる。違うと思う人もいる。それでも最初から非表示だったものが一度は本人の判断まで届いたことになる。GlassRoomが本当に欲しい最初の証拠はそのさらに先にある。

昨日までアイドルを一度も検索したことがなかった人から一件目のエントリーが来ること。

その一件は既存のアイドル市場から一人を奪った数字ではない。それまでアイドルとの接続を一度も持っていなかった人の候補一覧に、新しい一行が現れ、その人自身がそこを押したということになる。

GlassRoomの競合は、他のアイドルではない

GlassRoomが最初に勝たなければならない相手は、「あなたには最初から関係のない話です」という状態そのものだ。

すでに「アイドルになりたい」と考え、いくつものオーディションを開き、条件や楽曲や活動内容を比較している人を取り合うなら、競合は他のアイドルグループになる。GlassRoomが最初に接触したいのは、その比較表をまだ一度も作っていない人だ。アイドル募集を検索したことがない。オーディションサイトを巡回したこともない。自分が応募する側だと思ったこともない。その人にとってGlassRoomは、他のグループより魅力が弱いわけではない。比較される場所まで一度も到達していない。

だからGlassRoomにとって最初の競争は、他社より条件を良くすることでは始まらない。本人の候補一覧に「アイドル」という一行を表示させるところから始まる。それまでは応募率も、楽曲の強さも、衣装も、活動頻度も関係がない。候補になっていないものは比較されないし、断られることすらない。

この状態を維持しているものはいくつかある。まず強いのが、すでに成立している一日だ。学校へ行く。大学へ行く。仕事をする。友達と会う。SNSを見る。帰宅する。翌日また同じ時間が始まる。GlassRoomを嫌う必要はない。反対する理由もいらない。今日の続きをそのまま選ぶだけで、新しい候補は入ってこない。新しい活動にとって、強い拒絶より、何事もなく成立している日常の方が手強い。

本人が自分について持っている説明も、その状態を支える。「私はそういう人じゃない」「人前に出る側ではない」「歌えない」「ダンス経験がない」「アイドルには興味がない」。これらは本人にとってかなり自然な文章だ。ただ、その文章が作られた時点で、撮られたときの自分も、知らない人に見られたときの自分も、一度見た人が後日もう一度探すかどうかも、まだ測られていないことがある。未測定の項目まで「自分には関係ない」にまとめられると、募集ページへ来る前に候補そのものが消える。

周囲へ説明しやすい未来が優先されることもある。進学する。就職する。資格を取る。アルバイトをする。こうした選択には、何のためにやるのかを説明する言葉がすでに用意されている。一方で、「一度撮られてみたい」「知らない人からどう見えるのか知りたい」「数時間だけ別の名前で現れてみたい」は、やったあとにしか意味が分からないことがある。経験前に説明しやすい未来と、経験後にしか説明が完成しない未来が並べば、前者の方が通りやすい。GlassRoomは、この説明のしやすさとも競争している。

既存の「アイドル」という言葉に結びついている条件も大きい。長いレッスン、週に何度ものライブ、移動、撮影、SNS更新、生活の大きな部分を活動へ寄せること。それを見て「自分には無理」と判断した人が、本当にアイドルそのものを拒否したのかは分からない。その活動形式を拒否しただけかもしれない。週に何十時間も使えないことと、一度見た人からもう一度見たいと思われないことは、同じ判定ではない。

GlassRoomが活動時間を短く考えようとしているのも、参加を軽く見せたいからではない。活動した時間と、記憶に残る時間を同じ数字で扱う必要があるのかを疑っている。一時間だけ現れた人が、その後一週間誰かの頭に残ることはあり得る。本人がその場を離れたあとに名前を検索され、前の写真まで戻られ、次に現れる時間を待たれるなら、「一時間しか活動していない」という説明だけでは、その人に起きたことを十分に表せない。

You’re an idol when someone sees you once and wants to see you again. GlassRoomでいうアイドルは、一度見た人の側に二回目が発生するところから始まる。本人が何時間活動したかだけでは決まらない。本人が「アイドルになりたい」と何年前から言っていたかでも決まらない。一回目はこちらで作れる。撮る。出す。見せる。二回目だけは、見た側でしか発生しない。

そう考えると、GlassRoomが本当に遠いと感じるのは、他のグループへ応募した人ではない。GlassRoomを見て「違う」と判断した人でもない。そこには少なくとも一度、アイドルという候補が本人の画面へ表示されている。もっと遠いのは、GlassRoomもアイドルも一度も自分の話にならないまま、十九歳、二十歳、二十一歳と時間だけが進んでいく人だ。その人には断った記憶もない。迷った記憶もない。アイドルにならなかった理由さえ存在しない。

だからGlassRoomの競合を一つだけ挙げるなら、他のアイドルではない。「あなたには最初から関係のない話です」という状態そのもの。 現在の生活も、自己説明も、周囲へ説明しやすい未来も、既存のアイドル像も、その状態を維持する側に働いている。

GlassRoomが取りに行きたいのは、その状態を一度だけ崩すことだ。「アイドルになりませんか」と答えを渡すことではない。親との会話について書かれた文章から来てもいい。「自分に向いてることがわからない」と検索して来てもいい。何かを始めたいという検索でも、写真について考えている途中でもいい。その入口ではまだアイドルを探していない。読み進めたあとに初めて、自分の候補一覧へアイドルという一行が増える。

そこで閉じる人もいる。違うと思う人もいる。それでも最初から非表示だったものが、一度は本人の判断まで届いたことになる。GlassRoomが本当に欲しい最初の証拠は、そのさらに先にある。

昨日までアイドルを一度も検索したことがなかった人から、一件目のエントリーが来ること。

その一件は、既存のアイドル市場から一人を奪った数字ではない。それまでアイドルとの接続を一度も持っていなかった人の候補一覧に、新しい一行が現れ、その人自身がそこを押したということになる。

その人は昨日まで、アイドルにならない人ですらなかった。なるか、ならないかを考えたことがない。検索したこともない。比較したこともない。その未来は、本人の画面に表示されていなかった。

その人から一件目のエントリーが来たとき、GlassRoomは初めて「アイドル志望者を見つけた」のではなく、昨日まで存在しなかった選択肢を一人分だけ現実にしたと言える。

それが来るまではGlassRoomの仮説はまだ文章の中にしかない。

検索されなかった未来が一人分だけこちら側へ出てくる。

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stilloperable
個人ブログ。インターネット、仕事、学校、アイドル、まだ名前のついていない仕組みについて書いています。現在、GlassRoomというアイドルプロジェクトを準備中。

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