「新しいアイドル」という言葉はもう相当使われている。新世代、個性重視、自分らしさ、SNS時代、既存の枠を越える。東京でアイドル募集やアイドルオーディションを探せば衣装も楽曲も写真もコンセプトも十分に多様だ。ここへ新しい色を1色足したところで市場全体から見ればカラーチャートの番号が1つ増えるくらいの変化になる。
GlassRoomが触りたいのはもっと上流にある。アイドルが出来上がる前の仕様書。
多くのプロジェクトでは募集開始より先に相当な部分が決まっている。人数、方向性、曲、衣装、活動頻度、見せ方、欲しい人物像。オーディションは、その仕様へ適合する人を探す工程になる。精度を上げるほど企画は安定するし、ブランドも管理しやすい。この方法はすでに非常によくできている。
GlassRoomはメンバー募集の時点で仕様書に空欄を残す。
ここでいう空欄は「何も考えていません」という意味ではない。東京で活動すること、年齢、顔出し、契約、報酬、安全、活動に必要な条件は決める。空けておきたいのはその人が入ったことで初めて決められる部分だ。
声を聞く前にその声へ最適な曲は決められない。身体の使い方を見る前に、ステージ上の強さも確定しない。服への感覚、言葉の癖、写真に写ったときの情報量、他のメンバーとの距離、本人がすでに持っている仕事や人間関係。その全部が加入後にGlassRoomへ入力される。
人が入るということは空席が埋まることより大きい。
仕様書の書き手が増える。
ここがGlassRoomにとってかなり重要だ。
1人目が入った結果、曲の考え方が変わる。2人目が入ると、個人情報だけでは説明できない関係が発生する。2人が並んだときの速度、緊張、会話、視線、観客が勝手に読み取る関係。その時点で、募集開始時に書かれていた企画書はすでに古くなっている。
この古くなり方をGlassRoomは価値として扱いたい。
完成度の高い計画には計画通りに進む強さがある。人によって書き換わる計画には参加者が本当にプロジェクトへ作用している証拠が残る。
そして変更は1回で終わらない。
新しく作った写真を見た人が音楽を持ってくる。曲ができればライブの作り方が変わる。ライブから知った人が別の仕事を持ってくる。その仕事によって使える場所や技術が増える。増えた条件から募集開始時には候補にすら存在しなかった制作が始まる。
GlassRoomが以前から考えている「上限がない」はここまで含んでいる。
売上の天井だけを指しているわけではない。活動途中で何を仕事にできるかという項目自体が増える可能性がある。写真、音楽、映像、ライブ、服、文章、イベント、広告。最初のメニューに書かれていなかった仕事が、途中からメニューへ追加される。
未来の数字を大きく見せる募集はいくらでも作れる。GlassRoomには、まだそれを裏付ける実績がない。だから大きな未来を先に販売するよりプロジェクトがどう更新されるかを公開したい。
誰が入った。
何が変わった。
最初の案がどこで使えなくなった。
その人がいたことで何が作られた。
作ったものから次に何が始まった。
これが積み上がればGlassRoomの実績になる。
オーディションの意味も少し変わる。応募者の能力だけを確認する場では足りない。GlassRoom側もその人によって変更される能力を持っているか試される。
優秀な人を採用して用意した企画へ配置する。それだけならGlassRoomという名前で始める理由は薄い。
参加した人がGlassRoomの次のバージョンを発生させる。
v1.0を作った運営がv1.1もv1.2も全部自分だけで書く必要はない。加入した人、制作した人、見た人、そこから仕事を持ってきた人まで更新履歴へ入ってくる。
数年後のGlassRoomを現在の運営だけが正確に説明できたら、想定よりかなり小さく終わっている。
アイドルの新しさを服の色で測る時代はもう十分長く続いた。
GlassRoomは誰が仕様書を書き換えられるかから始めたい。
































