私はアイドルになる

アイドルになりたい。でもオーディションへの応募、仕事との両立、収入や将来を考えると決めきれない。「やるかどうか」が「どうやるか」に変わる、アイドルになる決意について。

アイドルになりたい。でもアイドルオーディションへ応募するところで止まる。仕事と両立できるか、収入はどうなるか、活動を続けられるか、自分に向いているか。考え始めれば確認したい条件はいくらでも増える。

調べることには意味がある。活動頻度を確認すれば仕事との衝突を予測できる。契約や費用を見れば開始前に避けられる問題もある。使える時間を計算すれば現実的な活動量も考えられる。未来を想像することでまだ発生していないリスクを先に発見することはできる。

それでも情報だけでは最後まで決まらない部分が残る。

自分が実際に活動したときどこまで続けられるのか。人前に出ることを自分がどう受け取るのか。仕事とアイドル活動を並べた生活が実際にはどの程度の負荷になるのか。何を得意とし何に消耗するのか。

この中には実行したあとに初めて発生する情報がある。開始前の検討だけで全部を回収することはできない。

だからある地点から先では情報収集ではなく決定が必要になる。

私はアイドルになる。

決意とは未来を正しく予測することではない。成功を確信することでも自分の適性を証明することでもない。調べられるところまで調べ想像できるリスクを確認しそれでも残った不確定さを含めて自分が進む側を決めること。

この決定が必要なのは、イドルという仕事に結果の保証がないからだけではない。保証のない仕事は他にもいくらでもある。

アイドルで特徴的なのは仕事と本人の距離が近いこと。

顔、声、身体、話し方、表現まで、自分自身が活動の中に入る。何か別の商品だけを外へ出して本人は後ろに残るという距離を取りにくい。

だから「私はアイドルになる」と決めることはまだ評価の定まっていない自分を人前に出る側へ移すことでもある。

ここで、「アイドルになりたい」と「私はアイドルになる」に差が生まれる。

「アイドルになりたい」の段階ではまだ自分を候補として扱える。募集を探す。条件を比べる。未経験でもできるか調べる。仕事との両立を考える。自分に向いているかを考える。判断の中心にはずっと「やるかどうか」がある。

「私はアイドルになる」と決めると同じ条件の用途が変わる。

仕事があるなら仕事と活動をどう配置するか。未経験なら最初に何を覚えるか。時間が限られているなら何を優先するか。負荷が大きいならどこを調整するか。

問題が消えるわけではない。問題の種類が変わる。

「やるかどうか」だった問題が「どうやるか」に変わる。ここが決意の機能になる。

決意がなければ活動について考えるたびに入口へ戻れる。時間が必要だと分かれば「やめるか」。難しいことが出てくれば「向いていないか」。予想より負荷があれば「やるべきではなかったか」。

もちろん実際に条件が合わなければ見直すことはある。ただアイドルになるために発生する問題のすべてをアイドルになるかどうかの問題へ戻していたら「どうやるか」を考える段階まで進みにくい。

その入口を本人の側で越えるために決意が要る。

この決意は周囲が代行できない。

GlassRoom側は活動条件を考えられる。仕事との両立を一緒に組める。活動量を調整できる。問題が出れば原因を分け次の選択肢を作ることもできる。

本人が全部を一人で処理する必要はない。

ただし周囲がどれだけ支えても「私はアイドルになる」という決定そのものを本人の代わりに引き受けることはできない。

本人が方向を決めることでバックアップする側にも具体的な仕事が生まれる。何を支えるか、何を減らすか、何を先に進めるかを、その方向に合わせて考えられる。

だから決意は一人で全部背負うための根性とは違う。

本人にしか決められない部分を本人が決める。

そこから先は一緒に作れる。

「私はアイドルになる」と決めることを大きく感じるか軽く決めるかは人による。ただ結果も適性も確定していない段階で自分から「やる」と決める。その行為には勇敢さがある。

外から十分な証明が届くまで自分を保留しておくこともできる。その保留を自分で解除して自分の時間をこちら側へ使うと決める。

アイドルになりたい。

その言葉には憧れが入っている。

私はアイドルになる。

こちらには自分の時間をどちらへ向けるかという決定が入っている。

この二つの間は自分でしか越えられない。

そして一度そこを越えると中心にある問いが変わる。

「やるかどうか」から「どうやるか」へ。

アイドルになる決意とはその問いを自分の手で変えること。

Written by stilloperable

GlassRoom
ToBeAlive Project

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GlassRoom / ToBeAlive Project

人がすでに持っている価値を、他人の場所で消費させず、自分の名前に残すための設計と文章。

アイドル、ブランド、仕事、選択について扱っています。

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