20歳からアイドルを始めるのは遅いのか。アイドルになりたいと考えていても20歳という数字を見ると急に「今からで間に合うのか」が気になり始めることがある。未経験、仕事との両立、収入、活動できる期間、周囲の進路。年齢そのものとは別だった問題までいつの間にか20という数字へ集まってくる。
ただ20歳という年齢だけでは本来そこまで多くのことは分からない。大学へ進んでいるか、働いているか、収入があるか、将来の方針が決まっているか、そのどれも20という数字には含まれていない。それでも「私は20歳」が「私はもう20歳」に変わることがある。この「もう」がどこから入ったのかを考えると年齢より比較の仕方の方が大きい。
一人で未来について考えているとき頭の中には同年代の人たちが出てくる。同級生の一人は就職している。別の人は大学に進んでいる。別の人には安定した収入がある。SNSでは同年代の誰かが何かを始め、別の誰かが成果を出している。現実ではそれぞれ別人の出来事だ。
ところが比較するときにはその分離が弱くなる。就職している人からは就職したという事実を取り、収入のある人からは収入を取り、行動の早い人からは行動力を取り、結果を出した人からは結果を取る。複数の人間に分散していた達成だけが「同年代」という一つの集団へ戻される。
すると頭の中の「20歳くらいの人」は現実の誰か一人より完成度が高くなる。仕事があり、収入があり、進路が決まり、行動も早く、何かしら結果も出している。そんな人が大量に存在しているような感覚になる。
ここで起きているのは普通の平均とは少し違う。十人の同年代を平均して一人を作っているわけではない。十人の中からそれぞれ目立つ達成だけを拾って一つの基準へまとめている。比較対象には複数人の良い部分が集まり自分については迷い、疲労、金の問題、先延ばし、未決定まで全部知っている。
相手は達成した部分だけで構成され自分だけは全情報で比較に参加する。この条件なら自分が遅れているように感じるのは不思議ではない。
一人で考えている時間にはこの比較が修正されにくい。実際に友人と話せば就職した人がその仕事を辞めたがっていることもある。大学へ進んだ人が進路を選び直したがっていることもある。収入がある人にも別の停滞がある。現実の他人にはこちらが比較に使っていなかった情報が大量にある。
頭の中の他人にはその追加情報が入らない。就職した人は「就職した人」として保存され、何かを始めた人は「もう始めている人」として使われ続ける。孤独な時間に生成される他人が現実より優秀になりやすいのはこのため。こちらが比較に必要な部分だけ残せるから。
そこで20歳という数字が単なる年齢ではなくなる。「20歳のAは働いている」「20歳のBは収入がある」「20歳のCはもう活動している」という複数の情報を束ねるための基準になる。その結果、「20歳ならこのくらい進んでいるはず」という架空の進行度が作られる。
年齢が社会の進み具合を測る数字として使われ始める。
すると「20歳からアイドルは遅い?」という問いも実際には「20歳という年齢で周囲と違う方向へ進み始めてもいいのか」に近づいていく。問題は身体的な年齢だけではなく自分が頭の中で作った同年代の進行度から外れることにある。
アイドルはこの比較と相性が悪い。就職なら入社何年目、大学なら何年生という共通の時間軸がある。アイドルには何歳で始めれば正しい、何年目でここまで到達すれば正常、という共通の進行表がない。20歳で始める人もいれば、それより後に始める人もいる。活動量も結果が返る時期も人によって違う。
共通の進行表がない仕事を周囲の進行表と比べれば自分だけ遅れているように感じやすい。
ToBeAliveでは20歳以上を募集している。ここでは20歳は応募できる年齢を過ぎた数字ではない。応募できる側へ入る最初の年齢になる。
この事実だけで将来の結果が決まるわけではない。仕事との両立がどうなるか、未経験からどこまでできるか、本人がどのくらい続けたいかは、それぞれ別に考える必要がある。ただ「20歳だから遅い」という一文に全部を押し込む必要はない。
20歳という数字へ、就職、収入、自立、同年代の成果、数年後への不安まで載せれば当然重くなる。そのうえ比較相手まで複数人の達成を集めた存在ならかなり不利な計算になる。
「20歳からアイドルは遅い?」と考えたとき本当に確認した方がいいのは年齢だけではない。
自分が比べている相手は誰なのか。その人は実在する一人なのか。それとも何人もの同年代から自分が気にしている達成だけを集めて作った基準なのか。
20歳という年齢が急に遅く感じられたとき、その数字の中には自分の年齢以外のものがかなり混ざっている。
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Written by stilloperable
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