自分のことを考えるとき、その言葉は誰のもの?

本当の自分がわからないとき、探すより先に考えたいこと。人を説明する言葉は少なすぎて、古いラベルが自分の見方まで決めることがある。自分らしさと言葉の関係をstilloperableが考える。

本当の自分がわからないとき|「自分らしさ」は誰の言葉でできている?

本人はもうここにいる

「本当の自分がわからない」という言葉を見ると、自分がどこかに隠れているように聞こえる。でも、本人はもうここにいる。朝起きて、何を見るかを選び、誰と話すかで反応が変わり、気になるものには指が止まり、興味がなくなったものは自然に通り過ぎる。その動きは毎日続いている。

わかりにくいのは、自分そのものより、自分を見るときに使っている言葉の方かもしれない。「私はこういう人」「これは自分らしい」「こういう場面ではこうなる」。そう考えるとき、すでに何かの言葉を使っている。その言葉を自分で作ったのか、昔誰かから受け取ったのか、何度も見たから馴染んだのかまで考えることは少ない。

親が使っていた言葉、学校で覚えた分類、友達から見た自分、昔近くにいた人の感想、SNSで何度も流れてきた言い方、プロフィールを書くときに便利だった単語。そういうものが混ざって、自分を見るときの字幕になる。本人は動き続けているのに、字幕だけ前の回から残っていることがある。

だから、自分を探すことより、自分を見るときに使っている言葉の精度が気になる。本人はもういる。確認したいのは、その本人に言葉の方が追いついているかどうか。

世界に何十億人いるんだよ

世界に何十億人いるんだよ、と思う。それなのに、人を説明するときに使われる言葉の品数は驚くほど少ない。「明るい」「おとなしい」「真面目」「人見知り」「マイペース」「繊細」「サバサバ」「個性的」。学校でも仕事でもSNSでも、同じような言葉が長く使われ続けている。

人の種類が少ないわけではなく、人を見る側の語彙が追いついてない。「人見知り」という一語だけでも、初対面で時間が必要な人、大人数になると話す量が変わる人、相手によって反応が変わる人、会話はできてもあとから一人の時間を必要とする人まで、かなり違う状態が入る。それを一語で処理すると、伝達は速くなる。その代わり、本人についての情報はかなり減る。

プロフィール欄は、本人より先にサイズが決まっている。性格、趣味、特技、好きなもの。そこへ人を入れようとすると、書きやすい言葉が残る。短くて、意味が共有されていて、説明を追加しなくて済む言葉ほど選ばれやすい。結果として、人の方が細かいのに、説明だけが同じ形になる。

便利だから残っている言葉と、本人を正確に見られる言葉は同じではない。昔から使われていることも、みんなが意味を知っていることも、精度の証明にはならない。

言葉は、説明したあとも残る

一度「私はこういう人」と考えると、その言葉は次の出来事を見るときにも使われる。自分についての説明が、あとから起きたことを整理する検索条件になる。

「私は人見知り」と考えていると、人と話すまでに時間がかかった日は、その言葉と結びつきやすい。初対面の人と自然に話せた日は、その日の出来事として通り過ぎやすい。「私は真面目」と考えていれば、丁寧に進めた日は自分らしく見え、思い切った行動をした日は珍しい出来事として整理されやすい。

先に置いた言葉によって、何を自分の情報として残すかが変わる。言葉は過去を短く説明するだけではなく、これから自分を見るときの焦点にもなる。

行動にもつながる。「自分はこういう場を選ぶ」と考えれば、その場へ行く回数が増える。そこで経験が増え、その経験を見て、最初の説明をさらに自分らしいと感じる。言葉、選択、経験が往復するうちに、最初は軽かった一言が本人の輪郭みたいに扱われるようになる。

言葉に暗示的な作用があると感じるのは、この流れだと思う。言葉が何かを勝手に起こすのではなく、見る場所、残す情報、選ぶ方向へ少しずつ入ってくる。だから、自分について使う言葉は思っているより軽くない。

プロフィールは、本人より古くなる

人は変わる。興味が変わる。話す相手が変わる。同じ場所でも前とは違う反応をする。昨日まで気にならなかったものが急に残ることもある。本人はその速度で動いている。

一方で、「この人はこういう人」という説明は長く残る。周りの中にも残るし、自分の中にも残る。数年前に使い始めた言葉が、いまも最新版のような顔をしていることがある。

そこで本人と説明の間にズレが出る。新しく出てきた反応を見ても、「珍しいね」で以前の説明へ戻す。興味が変わっても、「前はこうだったよね」と過去の情報を基準にする。本人を見るより、すでに持っている説明の方を優先すると、更新された部分が見えにくくなる。

自分に対しても同じことが起こる。昔の自分が決めた「自分らしさ」を、今の自分が引き継ぎ続ける。前に選ばなかったものを選んだとき、以前と違う感覚が出てきたとき、過去のプロフィールと照合して判断する。

でも、自分らしさが過去との一致率になったら、本人より履歴の方が強くなる。自分らしさは保存データではなく、その時点で何を見て、何に反応して、何を選んだかの方に近いと思う。

同じものを見ても、残るものは同じにならない

人の違いを考えるとき、特徴の一覧より、何が残るかを見る方が面白い。同じ映画を見ても覚えている場面が違う。同じ会話をしても引っかかる一言が違う。同じ街を歩いても、看板を覚える人もいれば、音を覚える人もいる。相手が少し黙った時間だけ残る人もいる。

この違いはプロフィールに書きにくい。でも、本人を見る材料としてはかなり細かい。何を知っているかより、どこで引っかかったか。何を好きと書くかより、なぜそこへ何度も戻るのか。同じ情報を受け取っても、残り方が違う。

「世界に一人」という言葉を使うなら、珍しい特徴を一つ持っているという話より、こっちの方が納得できる。同じものを見て、同じ言葉を知って、似た環境にいても、何を残すかまで同じにはならない。その積み重ねが、その人にしか出ない形を作っていく。

世界に一人しかないから価値がある、という順番でもない。その人が見てきたもの、残ったもの、選び直したものが重なった結果として、同じものがもう一つ作れない。その方がずっと具体的だと思う。

新しいラベルを増やせば終わる話でもない

古い言葉が足りてないからといって、新しい分類語を増やし続ければ解決するとも思わない。新しい名前を作って、また人をいくつかの型に分けるなら、棚の商品を入れ替えただけになる。

更新したいのは、言葉の数だけではなく、使い方そのもの。一つの言葉で足りなければ、複数の情報を持つ。場面によって違うなら、その違いまで見る。昨日と今日で変わったなら、説明も変える。まだ名前がついてない部分は、名前がついてない情報として扱う。

人を早く理解したことにするより、まだ知らない部分があると考える方が精度の高い場面も多い。「この人はこういう人」とまとめた瞬間に、そこから先の情報が入りにくくなることがあるから。

何十億人もいる世界で、少ない言葉だけを回し続けること自体に無理がある。人の方が細かいなら、言葉の方を細かくする。言葉が追いつかなければ、先に本人を見る。その順番を変えない。

stilloperableは、この違和感を書く

stilloperableは、人を説明する言葉の少なさに違和感がある。同じような言葉が長く使われ、その言葉の方へ本人を寄せて読むことにも違和感がある。その違和感を、雰囲気の話で終わらせず、どこで精度が落ちて、どこから本人とのズレが生まれるのかまで書く。

「その言い方、少し粗くないか」「その一言で全部わかったことになるのか」「自分についての説明なのに、自分より周りの方が馴染んでいる言葉じゃないか」。同じように引っかかる人と、stilloperableは同じ側に立っている。

こちらから新しい正解を配るつもりはない。正解を一つ置いた瞬間に、また人をそこへ合わせる構造が始まる。やりたいのは、人を見たあとで言葉の方を書き換えること。その人の反応や選び方を見て、前に使っていた説明が粗くなったなら更新する。それでも一語で収まらなければ、一語にしない。

GlassRoomでも同じことを考えている。完成したプロフィールだけで人を見るより、その人が何に反応するか、どこで速度が変わるか、何を何度も見てしまうかを見る。その人が入ったことで、こちらの見方や作るものまで変わる。その順番の方が、最初から用意した型へ人を合わせるよりずっと面白い。

stilloperableは、人を見るための言葉を更新し続ける。同じ感覚を持つ人が、「やっぱりこの言い方は粗かった」と確認できる文章を書く。新しい分類を増やすためではなく、本人より古くなった言葉をそのまま残さないために。

自分のことを考えるとき、その言葉は誰のもの?

「私はこういう人」と思ったとき、その文章がどこから来たのかを考える。自分で何度も確かめて選んだ言葉なのか。昔誰かから聞いた言葉なのか。SNSで何度も見たから、自然に自分にも使うようになった言葉なのか。前の自分には近かったけれど、今は少し距離がある言葉なのか。

使い慣れているから残っている言葉もある。昔からあるから、そのまま通っている言葉もある。みんなが知っているから、説明が早い言葉もある。でも、自分を見るために使うなら、速さより精度の方が重要になる。

本人はもうここにいる。何かを見て、選んで、気になって、飽きて、戻って、また別のものに反応している。自分の方が先に動き、言葉はそのあとから追いかけてくる。

だから、順番を逆にしない。人に言葉を合わせる。言葉に人を合わせない。昔から使われていること、みんなが使っていること、自分も何度も使ってきたこと。それだけで通す前に、その言葉が今の本人をどこまで見えているのかを確認する。

stilloperableは、その確認を何度でもやる。人の方が変われば、言葉も変える。言葉の品数が足りなければ増やす。一つにまとめるほど情報が減るなら、まとめない。本人を見た結果、これまでの説明が合わなくなったなら、説明の方を更新する。

世界に何十億人いるんだよ、というところから始めれば、むしろその方が自然だと思う。人の数も、見てきたものも、残ったものも違うのに、同じ少数の言葉だけで処理できる方がおかしい。

人に言葉を合わせる。言葉に人を合わせない。自分について使う言葉も、誰かについて使う言葉も、その順番で見る。

その言葉、本当に国内流通させますか。

stilloperable

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Author

stilloperable
個人ブログ。インターネット、仕事、学校、アイドル、まだ名前のついていない仕組みについて書いています。現在、GlassRoomというアイドルプロジェクトを準備中。

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